病院イメージ


甲状腺について

甲状腺疾患

悪性腫瘍、良性腫瘍、バセドウ病、橋本病、亜急性甲状腺炎、急性化膿性甲状腺炎など内科 的・外科的甲状腺疾患を幅広く診療しています。

1. 内視鏡補助下頸部手術(VANS法)
甲状腺1

清水一雄前教授が世界に先駆け1998年に開発した内視鏡補助下頚部手術(VANS法)は、すでに 経験数800例を超えており、わが国では最多です。 良性腫瘍やバセドウ病、転移や浸潤のない甲状腺癌が対象と なります。VANS法によれば、頸部に傷をつけることなく手術が行えます。詳しくは「内視鏡手術について」の項を参照してください。

2. 乳頭癌

甲状腺癌の中で最も頻度の高い低リスクの乳頭癌の場合、基本的にはできるだけ甲状腺を温 存した手術を行っています。ただし、欧米のガイドラインでは低リスク乳頭癌に対しても、甲状腺 全摘手術(+術後放射性ヨウ素内用療法、甲状腺ホルモン療法)が推奨されていることを踏まえ、 患者さんへの十分な説明と同意(インフォームド・デシジョン)のもとに治療方針を決定していま す。 乳頭癌のリンパ節郭清は、術前診断(頸部超音波やCT)でリンパ節転移が明らかでない症例 では気管周囲(中心領域)郭清にとどめ、リンパ節転移が明らかな場合はその領域の保存的郭 清手術を行います。 高リスクの乳頭癌の場合には甲状腺全摘手術後、放射性ヨウ素によるアブレーション治療を行 ったうえで、甲状腺ホルモン療法を行うことを基本方針としています。

3. 微小乳頭癌

腫瘍径1cm以下の無症候性(転移・浸潤のない)微小乳頭癌は、とくに性質がおとなしく生涯無 害に経過する可能性もあるため、手術のほかに、手術せずに経過観察する方法も選択肢とし て提示し、十分な説明と同意のもと患者さんのご希望に応じて対応しています。

4. 濾胞性腫瘍(濾胞腺腫、濾胞癌)

超音波検査や細胞診による鑑別診断が困難な濾胞性腫瘍に対しては、経験とデータをもとに 治療方針を決定しています。遠隔転移を来しやすい危険な濾胞癌の早期発見のための基礎研 究も行っております。

5. 髄様癌

髄様癌については、遺伝子診断に基づき家族性髄様癌や多発性内分泌腫瘍症(MEN)の可能 性も含めて、診療にあたっております。 遺伝子診断に基づく予防的手術も経験しています。

6. 手術合併症

術前反回神経浸麻痺のない甲状腺がん患者さんでの、術後永久性反回神経麻痺は1%程度で す。浸潤例でも可及的に反回神経を温存し、どうしても難しい場合には同時再建術を行い、声 帯筋の萎縮を予防しています。 甲状腺全摘手術後の永久性副甲状腺機能低下は5%程度に抑えられています。

7. 進行・再発甲状腺癌、遠隔転移症例の治療

周囲の臓器に浸潤する進行・再発甲状腺癌に対しては、耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍グループとの 協力のもと、QOLを充分に考慮したうえで、気管・食道・喉頭などの合併切除・再建手術も行い、 良い成績をあげています。 遠隔転移を生じた症例に対しては、適応を吟味したうえで甲状腺全摘を行い、放射性ヨウ素内 用治療を行っています。また、遠隔転移の外科的切除、放射線外照射、骨転移に対するビスフ ォスフォネート治療なども、各診療科の協力のもとに施行しています。 最近では、ソラフェニブやレンバチニブなどの新規分子標的薬による治療も始まりました。患者 さんの生活の質向上のため、厳密な適応判断のもと、チーム医療による副作用管理を行い、安全で効果的な使用を心がけています。

8. 未分化癌

稀ではあるものの、きわめて予後不良の甲状腺未分化癌に対しては、予後予測に基づき、集 学的治療により生存期間の延長を図り、QOLの確保に努めています。 また、稀少癌の全国共同研究体制として2009年に設立された「甲状腺未分化癌研究コンソーシアム」の事務局は当科に置かれており、オールジャパンでの研究活動において、中心的役割を 担っております。

9. その他の甲状腺疾患

甲状腺悪性リンパ腫については、血液内科の専門スタッフとの緊密な協力体制のもと診療を 進めています。 良性甲状腺結節(濾胞腺腫、腺腫様甲状腺腫)については、進行性に増大する充実性結節、機 能性結節、縦隔に進展するもの、濾胞癌との鑑別が困難な場合などに手術適応としています。 バセドウ病、橋本病、亜急性甲状腺炎、急性化膿性甲状腺炎などの診療も適切に行っており ます。