教室の特色 (教育)
ヒューマニティ教育から始まる専門医育成
卒前教育
第3学年から第4学年にかけて臨床医学総論、臨床コース講義(内分泌・代謝・栄養コース)、Small group learning (SGL)、Team based learning(TBL)、Observed structured clinical examination (OSCE)、さらに研究配属を教室のティーチング・スタッフが担当しています。
学生が自主的に学習するモチベーションを高く持ち続けるよう指導することを重視し、臨床講義的色彩の強い、Problem based medicine, Case based study方式をできるだけ採用するように心がけています。
第4学年から始まる臨床実習(Clinical clerkship: CC)は、2017年より1クール2週間となり、付属病院と武蔵小杉病院で行っています。Small group teachingの特色である双方向性の特別講義を甲状腺、副甲状腺および副腎についてそれぞれ行い、手術への参加、カンファランスでの症例プレゼンテーション、ディスカッションを行っています。
このシステムにより、一般外科の実習はもとより専門分野の典型的症例につき体験学習できます。当科で扱う本領域の手術症例数は国内の大学病院としては有数のもので、美しい手術および高い専門性が高く評価されています。
また、症例プレゼンテーションは座学で学んだだけの疾患についての有機的な理解が進み、解剖学や生理学の知識の臨床応用の機会を得るなどの面でも好評です。
実臨床の場における重要な教育目標は、実習を通して人間性(ヒューマニティ)に富んだ医師を育成することです。
医学は科学的データ(エビデンス)を基に成立していますが、あまりにデータ重視の立場からのみ医学、医療をとらえると、患者さんからの信頼を得ることはできません。
人間性、すなわち患者さんに対する優しさ、思いやり、コミュニケーション能力に欠けた医師は、どれほど医学的知識、医療技術のレベルが高くても良い医師とはいえません。このような医師としての基本姿勢は学生時代に培われるものと考えて、指導を行っています。
卒後教育
初期研修医(卒後1~2年目)に対しては、教室員が総力を挙げて外科の魅力を伝えるべく奮闘しています。
生涯学習者としての生活の充実感、社会貢献や自己実現といった観点からの外科医の魅力と心意気といったものを若い医師たちにぜひ伝えたいと考えています。
卒後3年目からの後期研修(専攻医)では、2018年4月にスタートした新専門医制度に基づいた、日本医科大学付属病院外科を基幹病院とする外科領域専門研修プログラムにのっとった教育を行います。内分泌外科専門医は日本外科学会を基盤とする外科専門医のサブスペシャリティとして正式に承認されています(ほかに泌尿器科専門医、耳鼻咽喉科専門医のサブペシャリティとしても認められました)。
1年目(卒後3年目)においては、内分泌外科を含む外科学講座の各分野をローテートします。内分泌外科に入局した場合は他の分野(心臓血管外科、呼吸器外科、乳腺科、小児外科など)のローテートは各1~3か月とし、早くから目標とする専門分野の経験を十分積めるよう配慮しています。
2年目(卒後4年目)には手術症例数が多く、指導体制も充実している関連施設(日本医科大学付属武蔵小杉病院、花と森の東京病院など)において、一般外科・消化器外科研修を行い、一般外科医としてのトレーニングを術者および助手として積むことになります。このようにして、あらゆる外科的疾患に対処できる外科医としての基礎を、前期研修医期間も含め卒後4年で築き上げます。
後期研修の3年目(卒後5年目)以降は内分泌外科領域を中心に研修しつつ、早期に外科専門医資格が取得できるようプログラムを整備しています。内分泌外科関連施設である甲状腺専門病院(内分泌外科専門医制度認定施設)で集中的専門研修を受けることも可能です。専門的手術手技の向上と内分泌外科専門医試験制度に対応する知識、経験の習得を図ることが可能です。
参考ページ:研修プログラム専門医教育の目標
甲状腺・副甲状腺・副腎といった内分泌臓器の疾患には、バセドウ病や橋本病、クッシング症候 群やアルドステロン症、褐色細胞腫、副甲状腺機能亢進症などの機能性疾患があり、代謝異常 や二次性高血圧、骨および腎疾患の原因となっています。
良性・悪性の内分泌腫瘍も様々で、 甲状腺癌ひとつをとっても、放置してもよいくらい予後の良い無症候性微小乳頭癌から、あらゆ る癌の中で一番予後が悪いとされている未分化癌、遺伝性に配慮を要する髄様癌など多種多様です。
実地臨床の場において、この奥深い世界を正しく理解し、美しく実践する「診療力」を鍛えることはもとより、疾患の不安に苛まれる患者さんにヒューマニティを持って寄り添える「対話力」を持つ医師を育てたいと思います。
さらに、常に好奇心、探究心を持って自らの経験を科学的に検証し、問題解決のための新たなエビデンスを世界に向けて示し続ける「発信力」を持ってこそ、アカデミック・サージャンとしての内分泌外科医の名にふさわしいと考えています。
当科では、国内のみならず国際学会での学会発表、論文発表の指導も積極的に行っています。毎年のように受け入れている留学生との英会話経験も力となり、早くからの国際学会での活躍を期待しています。
現代の医療は細分化し、専門化が一層進んでいますが、それぞれの専門家が孤独な競争をす るのでなく、協同して知恵を集めることで新たなイノベーションを起こすことができます。そのため の「協調力」の重要性も伝えていきたいと思っています。
日本医大では、旧第二外科講座(心臓 血管外科、呼吸器外科)や内分泌内科、病理部をはじめとする関係各科の好連携により、臨床 教育に理想的な体制が整っています。
多発性内分泌腫瘍症など複数の臓器・専門分野にまたがる疾患や新たな分子標的薬治療を 含む集学的治療の質が患者さんのQOLを大きく左右する高度進行甲状腺癌の診療などにお いて、チーム医療体制の充実が威力を発揮しています。
また、頻度は低いもののきわめて予 後不良の甲状腺未分化癌に対する全国共同研究組織である「甲状腺未分化癌研究コンソ ーシアム」の事務局は当教室に置かれており、中心的役割を担っています。協調性を持った 若い力の参集を期待しています。
女性医師の育成について
近年の女性医師の増加にともない、当教室でも女性外科医に対する環境整備と豊富なキャリア・パスの提示を目指しています。 男女の別にかかわらず、個々の生活状況に配慮した教室としてのバックアップ体制、仕事場でのアメニティの充実に努めています。